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炭素繊維の藻で水を浄化 水草よりも炭素繊維に魚が集まる不思議!!(1/2)

群馬工業高等専門学校 物質工学科特任教授・小島昭氏

 炭素繊維は鉄より強くアルミより軽く、航空機・自動車・建築・土木などへの応用が進む注目の素材。この炭素繊維を使って人工の「藻」をつくり、97年から全国200カ所以上の河川や湖・池の水浄化と魚の再生に取り組んでいるのが群馬高等専門学校の小島昭特任教授だ。「藻」には多くの微生物が固着して膜をつくり、その膜が水を浄化する。さらに、魚の餌場や産卵場所の役目も果たす。未解明の点も多いが実際に地域の水がきれいになり魚が増える現象が住民の心を捉えている。大規模な設備や工事が不要で、公共工事等にも一層取り入れられることが期待される。

 

――小島先生は1943年群馬県桐生市生まれ。群馬工業高等専門学校で40年間教えておられます。炭素繊維を使った水浄化の研究を開始されたのはいつごろですか?

 

 30年近い炭素の研究で、炭と生き物の関係にドップリ漬かってきました。炭素繊維による水浄化の研究の始まりは、93年に炭素繊維をどぶに落したこと。どぶから炭素繊維を引き上げたら枯れ葉が2枚くっついていて、触ったらヌルヌルしてしっかり泥がついていた。炭素繊維は、細いフィラメントが1万2000本集まって1束となっている。それを広げると微生物集団がつくった膜=バイオフィルムが形成されている。この微生物が水中の汚れたものを分解して水がきれいになることを発見しました。

 

――「炭素」研究と出会ったきっかけを教えていただけますか?

 

30代の頃、大学時代の恩師、群馬大学の大谷杉郎先生の下で炭素の研究を始めました。先生はピッチ系炭素繊維の発明者。私は幼稚園から今までずっと桐生生まれの桐生育ち。高校を出て昼間の大学には行けないので、夜学に行ってました。昼間は先生の研究室でアルバイト。普通高校出身で化学のカの字も知らなかったので丁稚奉公に入った感じ。

 

 大谷先生がピッチ系の炭素繊維を発明するドラマを目の前で見ていました。3年後、昼間の学生になり、大学卒業に計6年。卒業後、群馬高専に勤めて紙屋になり、紙の研究をしていました。30代になってまた先生のところに転がり込んだ。「先生クビになっちゃったよ」って言ったら、「しゃーねーな、炭屋になれ」っていうんで紙屋から炭屋に戻りました、食べていくために。

 

――これまでの「炭素」との関わり、研究を教えていただけますか?

 

 炭素を使った「歯根材」と「人工臓器」の研究開発です。どちらも、一部は皮膚内に、一部は体外に出ているという共通点がある。歯根材の研究をしている時から、「なんで細胞がそんなに元気なの?なんで人間にとって炭はそんなにいいの?」と問答を繰り返していました。研究に10数年、これを三菱化成が実用化して人の口にまで入った。最終的には厚生省が「歯は白くなくちゃ駄目だ。お歯黒じゃ駄目だよ」で終わり。

 

 その次に、長野県諏訪市のサンメディカル技術研究所で人工臓器・心臓ポンプをやりました。実用化に15年。今この心臓ポンプで20人が生命を長らえています(導入実績2年以上)。赤ちゃんの臍みたいに、外にある電源ケーブルが炭素皮膚ボタンを通してお腹の中に入る。最終的には炭素ではなくポリエステルを使っていますが。

 

 この時から、炭と生き物の関係にドップリ漬かっています。「生体親和性」、生体になじむという点では炭素は抜群です。しかし「なぜ?」と問われると原子レベル、ナノレベルまでいってもわからない。

 

――環境事業に取り組まれたきっかけを教えていただけますか?

 

 環境に入ったのは40代半ばから。異業種の方々の真剣な相談を、丁寧に聞かせていただいた。いつもそれが僕の新しい発見・展開につながっているわけです。

 

 93年に、木炭関係の方から「木炭で水の浄化ができないか?」という相談をもちかけられました。へそ曲がりなものだから、木炭入りのコンクリートをつくりました。日本の河川は、公共事業によりコンクリートで囲ったせいで生物が棲めなくなってしまった。一方、木炭で水を浄化したくても木炭の寿命はわずか1カ月。コンクリートの中に木炭を入れると水が浄化され生物も棲めるようになり一石二鳥じゃないかと。名付けて「バイオコンクリート」。

 

 実験的に通常のものとバイオコンクリートを両方池の中に入れておいたら、バイオの方にだけヒルが3匹いた。差がついたのでにやにやしていました。それが炭素繊維で水を浄化する研究に入るきっかけ。

 

 最近は、アスベストの無害化を研究しています。普通は約1500度ですが、私のところでは700~800度で分解できます。この技術は私どもがトップです。

 


「ユラユラ」がポイント

 

――浄化材にはノレン型、房型、織物型など色々な形がありますが、一番出ている(実験・公共事業など)のは、どのタイプですか?

 

 ムカデ型(写真2)です。ポリエステルの支柱に太さ1000分の7ミリ(髪の毛の約10分の1)の足が60本付いて、大ムカデのよう。

 

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――炭素繊維だけに微生物膜ができるのはなぜですか?

 

 後で気づいたことですが、炭素繊維の「機械的特性」が要因です。1本の足は1万2000本の炭素繊維でできているので、純然たる引っ張りには強い。炭素繊維の重量の1000倍もの固着物がついてもちぎれません。

 

 比重は、鉄の8に対して1.7と非常に軽い。だから水中で1万2000本の繊維がふわっと広がるんです。

 

 単に強いだけでなく、もう一つの大きな長所がしなやかなのに立つこと(写真1)。髪の毛や木綿など他の繊維では絶対に立たない。だからゴルフのシャフトやテニスラケット、釣竿に多用されています。

 

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 弾性(竹のように曲がっても元に戻る反発力)が数百ギガパスカルある。これに対して普通の糸は数ギガ。水の流れを受けて、他の繊維は元に戻れないが、炭素繊維は強い弾性・反発力で真っ直ぐに戻ろうとする。この水中での「ゆらぎ」こそが水質浄化の最大のポイントなんです。

 

 その上、極細の1本1本の繊維がそれぞれに反発しあうので、水中でワーッと分散して大きな表面積のネットをつくる(図1)。これが、水の流れの中でへこんだり膨らんだりポンプ運動をして酸素を内部まで取り込む。

 

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 水浄化には、酸素が好きな好気性バクテリアと嫌いな嫌気性バクテリアと両方が必要。ポンプ運動によって酸素が十分に供給されるので、炭素繊維では他の繊維に比べて酸素の好きな菌がネット内部まではるかに大きな領域に棲める。だからバイオフィルムを形成できる。他の繊維だったら、微生物はわずかに外側についているだけ。バイオフィルムは形成されません。

 

(本村槇子)

(つづく)

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