炭素繊維の藻で水を浄化 水草よりも炭素繊維に魚が集まる不思議!(2/2) (2008/08/13)

ワカサギが湖に戻ってきた!
(つづき)
――炭素繊維には、動植物プランクトンの増殖に貢献し、産卵床、稚魚生育、餌場など、人工の藻場システムの働きもあるといいます。
99年に設置した群馬県榛名湖ではワカサギを復活させました。榛名湖の方々の、「昔は水草がたくさん生えていて、ワカサギも魚もいっぱいいた。なんとかワカサギを復活してくれ」という依頼にチャレンジしました。湖の大きさは約1㎞×1㎞。周囲4㎞。実験は岸から50m、水深5mの地点で、図の装置を12個沈めた。榛名湖の場合、50m×50mの範囲で、湖全体のわずか0・25%。一般に、藻場の形成を目的とする場合は、湖全体の0.5%に浄化装置を設置すれば魚は全体に広がります。
入れて10年。ワカサギが増えています。漁解禁の9月に装置の付近に網を仕掛けたら大変な大漁です。10~12月には湖全体に広がります。
――炭素繊維による水浄化には様々なパターンがありますが(左の中欄参照)、水底のヘドロを浄化する究極のシステムについて教えていただけますか?
この技術は06年7月、旧芝川に導入し、テレビの「宇宙船地球号」にも出ました。何度も失敗を繰り返し、技術開発に5年。最終的に図のような構造になり、今はメンテナンスもほぼ不要で100%うまくいっています。
河川浄化、水質浄化といっても、初めのうちは水しか見ていませんでした。水浄化だけでは、下にたまっているヘドロからまた汚泥が出てきて汚しちゃう。どうやって浚渫(しゅんせつ)、つまりヘドロを退治するかが水浄化の基本。機械的に重機を入れて全部取り除く、あるいは化学薬品を入れて固めてしまえばいいのだが、そこにいる生物を全部殺すことになる。本来、私はそこにいるものはそこにいる生物を使って分解する「地産地消」がベストだと信じています。
ヘドロを微生物で分解するとき、問題はヘドロの中には酸素がないこと。酸素がないから嫌気菌以外の微生物は死んでしまう。しかし、元気な好気菌は水中に無数にいるので、炭素繊維のハシゴを立て、それを伝ってどんどんヘドロ部まで下っていけるようにすればよい。とはいえ、底部になにもないと、菌が川底で死んでしまう。底部に好気菌が活躍できる拠点があれば微生物はそこに棲み着くことができる。
微生物は炭素と相性がよく、一緒に住んでいるととても元気になる。酸素濃度が上がってきて、ヘドロがなくなっていく。芝川では1mあったヘドロが50cmに減って、シコシコシコと歩けるようになった。性状も前はネチョネチョだったのがサラサラになった。
酸素濃度が高くなれば植物が育つ。水の透明度が増し、太陽光が届くようになると光合成を行う。プラスのスパイラル。生汚水物に近いものは無理だが、環境水は大丈夫。猪鼻湖(静岡県浜松市)でもやりました。
――07年度に「炭素繊維水利用工法研究会」を立ち上げ、企業や個人会員が技術説明会や共同研修、販売などに参加できるようバックアップ。今では、(株)日本設計、(株)間組、帝人(株)、東レ(株)などの大企業も多数メンバーになっていますが、この協会の目的は何ですか?
1つはビジネス、1つは市民への普及です。第1の目的は、炭素繊維による水浄化法を『積算資料』に掲載すること。これに載らない限り、自治体の人にうまく説明できない。研究会に多くの会員が集まったおかげで、今年1月号に掲載できました。今は単品の価格しか掲載されていませんが、実際に自治体が使えるように、水質、面積、工法、価格などの施工の標準マニュアルをつくっています。
この技術はこれだけ面白いのにまだ知らない人が多い。最大の理由は、私が水や土木、環境、建築のいずれの専門家でもないこと。全く異業種の僕がいくら1人でわめいていてもダメ。いろんな分野の企業・研究者・本家本元がおっかなびっくりでも入ってこないとダメ。でも、これだけの規模になると、逆に水・衛生工学など色々な専門家・研究者が入ってきます。これからは底辺の加速がテーマです。
群馬県では産学官連携での炭素繊維の産業化がうまくいかず、炭素繊維アレルギーが一部の企業にあります。でも、この水浄化はビジネス化を図り、地元にも広げて行きたい。
炭素繊維で世界中の水をきれいにしたい。でも、炭素繊維は魔法の糸ではない。榛名湖でも、商工会や漁業組合、地域の方の努力が大きな役割を果たしました。炭素繊維はあくまでワンポイント。まず住民自身が水を汚さないこと。炭素繊維は人間がつくった異物ですから、本来の自然の姿に戻れば撤去します。榛名湖も水草がもどれば撤去します。
(本紙 本村槇子)
