外食セルフオーダーシステム 居酒屋・焼肉店―客を待たせず追加注文で売り上げアップ (2008/11/20)

飲食業の慢性的な人手不足解消の切り札としても期待される
日本国内の労働人口は、2030年には2006年と比較して、約1070万人、率にして16%減少するという報告がある一方、飲食業などサービス業の求人数は増大と、人手不足問題は今後も続きそうだ。
飲食業界からすると、アルバイトの人数とともにその質も問題になる。メニューを覚えるのはもちろん接客用語の使い分け、注文客を待たせない、注文を間違えない、繁忙時に速やかに配膳するなどの課題も多い。人手不足の分、外国人留学生にたよるケースもあるが、接客上のコミュニケーションがうまくできない場合は売上、次回の来店に響く。
「セルフ」に期待とニーズ
タッチパネル型VSペンタッチ型
飲食業界の慢性的な人手不足解消の切り札として、外食セルフオーダーシステムが、居酒屋・焼肉・回転寿司・カラオケ店を中心に広がっている。
外食セルフオーダーシステムとは、お客自身が携帯型の注文入力に、紙やデータで指示される仕組み。これにより店員が客にオーダーを伺いにいく必要がなく、配膳や後片づけに集中できる。
接客は外食産業にとって大切な仕事。特に、客のクレームの中身は、売上につながる情報ばかりだが、人手不足のため繁忙時の居酒屋などでは、待ち時間を短く早く食べたい客からの注文を受け切れていない。「追加注文の多い居酒屋や焼肉店では、従業員を呼んでもこない、といったことが多くの店で発生し、稼ぎ時である繁忙期にクレームや売上チャンスのロスに繁っている」のが現状だ。
本来、売上となるはずの注文をとっていきたいという居酒屋・焼肉店の要望に応えたセルフオーダーシステムとして、テーブルの調味料やメニューが置かれる場所に常設する「タッチパネル型」と紙のメニューに書かれた料理やドリンクにペン先を当てる「タッチペン型」がある。
タッチパネル型
「注文」から「情報・集客」端末に進化
外食チェーン大手の(株)コロワイドが展開する「手作り居酒屋甘太郎」など導入店舗数約580店舗に、導入端末数約1万8000台の「タッチパネル型」の注文入力端末「メニウくん」を、全国で展開するのが、ワールドピーコム(株)。
ワールドピーコム(株)は、全国直営飲食店約1000店舗を持つ(株)コロワイドのグループ会社である。
もともと介護関連機器として開発したものだけに、画面に大きくメニューが映し出され、好きなものと数を押して確認ボタンを押すだけという、高齢者にも簡単に操作ができるように工夫されている。これにより注文形態は、従業員が来るまで客が注文をできずに待たされていた状態、いわゆる「店舗主導型」から、従業員を待たずに好きな時に好きなだけ注文ができる状態、いわゆる「お客様主導型」へと大きく変わった。パネルは、圧力を加えて押すと反応する抵抗膜式を採用し、トラブルも少ないとのこと。
仕組みは電車のキップ販売パネルと同じで、画面の切り替えも簡単だが、1台あたりのリース代が「ペンタッチ型」と比較して高額になる。従来の常設「タッチパネル」入力端末だと、各テーブルに電源が必要だったが、「メニウくん」には約3時間駆動のバッテリーも付いているため、電源のない場所でも設置可能。
「15~20テーブル位のお店からも問い合わせが多い」という。リースは5年間で、月5万~10万円。
このタッチパネルは単に「注文端末」だけでなく「情報端末」や、「集客端末」としての利用も可能。
それを裏付けるように、2007年11月に同社は、携帯電話ウェブ広告発信会社(株)インタースペースと、1万5688台の「メニウくん」の画面を通じ、ウェブ広告を流す契約をしている。同社は携帯電話端末と「メニウくん」を結ぶことで、ウェブコンテンツサービス産業を展開。「メニウくん」を単なる「注文端末」だけでなく「情報端末」としてビジネスチャンスを広げた。
「当社は今後、『インターネットや携帯電話端末を利用したエンターテイメント産業でのビジネス展開』を視野に入れ、『メニウくん』を『情報・集客端末』として展開することになる」と同社事業企画室長堀本流世氏は語る。
「メニウくん」の画面から「モテ度ランキング」、精神年齢や肉体年齢がわかる「年バレ」といったパーティゲームや「タロット」占いなどを、有料で利用することができる。パーティゲームは、合コン気分で盛り上がりたい若者たちの居酒屋リピート率を上げることも可能。焼肉屋で家族連れが多い場合、幼児向けゲームを無料で提供し、集客率を上げている店もある。
リース料の高い「タッチパネル型」入力端末から携帯電話ウェブ広告を配信することで、店に対して「メニウくん」を無料で導入するといった、新たなビジネスモデルも視野に入れることができる。
ペンタッチ型
従来の紙メニューで利用率100%
「目の前のタッチパネルを覗き、またテーブル上の紙メニューから、ほしいものを確認し、配膳する従業員にタッチパネルを使わず、従来通りに口伝えで注文する客が意外に多く」、特に年配者ほど新しい機械に戸惑う。そこで、従来の紙のメニューから自分で簡単に注文できる形に近いシステムをめざしたのが、「ペンタッチ型」入力端末。
「ペンタッチ型」の注文入力端末を販売する主な2社を紹介する。
居酒屋チェーン「さくら水産」で導入している「ペンタッチ型」入力端末「デリタッチ」を販売しているのが、(株)寺岡精工。PDA(PersonalDigitalAssistants個人用の携帯情報端末)に接続せず、読み取った情報はペンに内蔵されたスピーカーから音声が流れ、お客が自分で注文したものを耳で聞いて確認できる仕組みだ。ペン型端末30本と専用のサーバー、キッチンプリンターなどをセットした月額のリース料は、4万5000円から。従来の「タッチパネル型」の月額リース料の約2分の1から3分の1。「従来の紙メニューに専用シールを貼るだけで、すぐにデリタッチが使える」と使っている店でも好評。
居酒屋チェーンを展開する(株)ニユートーキヨーの「庄屋」など10数店舗ほどに、「ペンタッチ型」の注文入力端末「オーダーファインダーミニ」を2007年1月から販売しているのがNECインフロンティア(株)。
同社は、外食産業向けPOSシステムでは多くのシェアを持っている大手メーカー。NECインフロンティア(株)の「ペンタッチ型」は、ペンの先端にカメラを内蔵するペン型端末をPDAに接続したもの。紙のメニューには極小ドット(点)の集合の形でID番号などのコードが埋め込まれている。それをペン内蔵のCMOS(シーモス・相補性金属酸化膜半導体※注1)カメラで読み取り、PDAの画面に読み取った料理の注文内容や数が表示される。PDAを操作し、確定すると、注文内容が無線LAN経由で厨房まで届くしくみだ。
「ペンタッチ型」入力端末詳細は次号。
(轟晃爾)
※注1=
CMOS(シーモス相補性金属酸化膜半導体)カメラ=携帯電話に多く使われている相補性金属酸化膜半導体を使ったカメラ。消費電力が少ないことが特徴。
