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夢と光の行列 アジア アメリカに新たなる市場を求めて

海外の日本チェーン店に行列ができる。

 2008年11月、社団法人日本フランチャイズ協会が、正会員・準会員を対象に自社の海外展開状況をまとめている。3年以内に海外拡大を予定している外食FCは14社。研究会員・賛助会員で、中華レストラン、アイスクリーム等の企業5社が中国、シンガポールといった新たなマーケット進出を意欲的に目指している。

 
 多くの外食フランチャイズ企業が、海外に向け新たな挑戦を始めようとしている2009年。アメリカ、中国に乗り出し、様々な知恵と工夫で行列ができる店を成し遂げた2社を紹介する。

 

博多ラーメン「一風堂」

 

 若者でにぎわうニューヨークのマンハッタン南東部イースト・ビレッジに、長い行列ができている。行列の先にあるのは、日本の博多ラーメン店「IPPUDO NY」だ。

 
 同店をオープンさせたのは、国内で博多ラーメン「一風堂」を展開している力の源カンパニー(本社・福岡市)。2008年3月のオープン以来、客の入りは1日平均600人を超え、土日の行列は2時間待ちにもなるという。

 
 客層の約8割はアメリカ人。既に3日に1回食べに来るハードリピーターができるなど、現地で確実にファンを掴んでいる。

 

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 こうした評判を受けて、現地の「ニューヨークタイムズ」は「わずか13ドルで飛ぶ、日本への旅」と同店を絶賛、さらに「ミシュランガイド2009NY版」にも掲載された。

 

 

開店9ヵ月で売上3億円に

 

 一風堂の海外出店は、過去に現地企業と合弁で中国に出店したことはあるが、単独としては今回が初めて。

 
 同社では、2000年よりニューヨークへの出店を計画していたが、2001年のテロ事件により一時凍結。2005年に再び本格化し、昨年3月、実に8年の歳月をかけてオープンにこぎ着けた。

 
 ここまでニューヨーク出店にこだわったのは、「世界の経済・芸術・流行の中心地で、『ラーメン』を『スシ』『テンプラ』に続く日本食文化として広めたい」という同社の思いだった。

 
 NY出店に掛かった総投資額は調査費など含め約2億2000万円。

 
 初年度の売り上げ目標は3億円だったが、オープンから9ヵ月の12月に入った時点で3億3000万円を売り上げ、目標を超えた。

 
 これは、同社の日本で多く売り上げる店舗(1億8000万円)と比べても2倍近い数字だ。

 

 

現地に合ったマーケティングでイベントを連続

 

 ニューヨークは流行に敏感な土地。そこで同社は、現地のPR会社と相談し、「IPPUDO NY」のグランドオープンの2週間ほど前から、プレスやプロをパーティー形式で招いたプレオープンや、一般客向けのソフトオープンなど小まめなイベントを実施。「ラーメン・イズ・ジャパニーズ・ソウルフード」というキャッチコピーを打ち出し、ニューヨーカーの注目を集めた。

 
 大掛かりなオープンイベントを1回するよりも、細かく小規模なイベントを連続して行うほうがニューヨークに合っているというマーケティング。これが見事に当たり、オープンから行列ができた。さらにその行列を現地メディアが取り上げ、それを見てまた新しい行列ができるという好循環が生まれた。

 
 ニューヨークは元々移民の街ということもあり、異国の味に抵抗が少なく、さらに「居酒屋」など新しい日本食ブームが起きていたのも追い風になった。

 

 

リピーター呼ぶ秘訣は「本場の味」と「和モダン」

 

 もちろん、最初だけ人を集めても人気は続かない。リピーターを確保し、連日の行列を生んだ秘密は、本場「日本の味」にある。

 
 ニューヨークにラーメン店は50店舗ほどあるが、ほとんどが中国人・韓国人の経営で、本場の味は少ない。

 
 そこで同社では、厨房に福岡市の本店で修行を積んだ日本人スタッフを派遣し、「日本の味」を提供。

 
 アメリカでは既にしょう油の味が浸透し、日本食が広まる土台があるうえ、一風堂の「とんこつ味」はクリーミーな風味で外国人向きでもある。麺をすする習慣のないアメリカ人に合わせて、麺の長さを一般的な27㎝から5㎝短くしたり、スープの味を若干丸く、マイルドにするといった細かい調整をしながら、繊細な日本の味はそのままだ。

 
 もう1つの秘密は、和モダンテイストの店の雰囲気とアメリカに合わせたダイニングスタイル。

 
 「IPPUDO NY」の店舗面積は100坪で、国内の一般的なラーメン店40坪程度と比べてかなり大きい。店内に入るとまずレセプション(受付)があり、その奥には丸テーブルやボックス席など多彩なシートが全82席用意されている。このうち、日本のラーメン店にあるようなカウンターは6席しかない。

 
 インテリアも、光と影を上手に組み合わせ、博多塀を埋め込んだ壁や山笠をモチーフにした切り絵など、随所に和を感じさせる洗練されたテイスト。日本の癒しを大切にしたインテリアを取り入れつつ、洋風家具を使い、より高級感を演出した。

 

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 また、メニューもラーメンだけではなく、日本らしさを盛り込んだ「鶏のから揚げ」「海老のガーリック炒め」など一品料理30種、さらに日本酒やワイン、日本酒をベースにした「サムライカクテル」などを多く揃え、高級レストラン感覚でランチやディナーを楽しめるようにしている。

 
 これについて、出店が具体化して以来、何十回と福岡とニューヨークを往復してきた力の源カンパニー営業戦略部長の小川剛氏は、「単なるラーメン店としてではなく、『日本料理の中の1つとして、ラーメンを主にしたレストラン』として出店した」と説明する。

 
 ブームになると言われながら、今までアメリカでラーメンが定着しなかった理由は、(1)アメリカでは食事はゆっくり会話をしながら楽しむもので、日本のラーメン店のように狭い店内でさっと食べて帰るような料理はファストフードぐらいしかないこと、(2)安価な「インスタントヌードル」のイメージが強く、 「ラーメン」が認知されていないこと―にあった。

 
 そこで同社は、日本のように回転率を上げるのではなく、逆にゆったりとしたアメリカ人に合った「ダイニング」としての空間を演出し、サイドメニューを充実させ、ラーメンを「インスタントヌードル」のイメージとは違う「日本食の1つ」として提供したのだ。

 
 ラーメンの注文の約7割を占める2大看板メニュー「赤丸かさね味」と「白丸元味」の価格が13ドル(日本の価格そのままなら7~8ドル)と高価なこと、客単価が昼で16~18ドル、夜で35~40ドルと一般的なラーメン店に比べ高額なことからも、同社の戦略が見えてくる。

 
 「日本での『ラーメン業界への出店』とは違うものとして考えている。競合するのはフランス料理やベトナム料理などのレストランだ」と小川氏は話す。

 

 

2年目に注目

 

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 順調なスタートを切った「IPPUDO NY」だが、今年が本当の勝負の年となる。リーマンショック以降、アメリカの外食産業は急激な不景気に落ち込み、既に客単価100~200ドルの高級レストランでは客が逃げ始めている。また、有名博多ラーメンチェーン「一蘭」がブルックリンに出店するなど、日本からのライバルも増えている。

 
 こうした状況で、2年目にどれだけ伸びることができるか。「IPPUDO NY」の今後に注目だ。

 
(酒井真一)

 

 

「サイゼリア」

 

 日本のイタリア料理は、とにかく高過ぎる。イタリア国内でイタリア人が、普通にイタリア料理を食べている価格で、日本のお店に出したいと、国内769店舗をチェーン展開する(株)サイゼリヤ。

 
 同社がイタリア料理を薦める理由として、イタリア料理は素材の味そのままで食べ、素材のよさを引き立てる組み合わせの料理手法を持っている点をいう。独自の中華料理文化を持つ中国人こそ、本当においしいものがわかるはずと、2003年、中国上海に100%子会社の上海薩莉亜餐飲有限公司を設立。

 
 出店から6年目の現在、同社は完全に中国人客の心を掴んだ。

 

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カップルや家族連れが1日2000人

 
 1日2000人、サイゼリヤの店の前には、長蛇の列。若いカップルやグループ、家族連れが店前に置かれた椅子に座っている。店内は、ラファエロやボッティチェリの絵が飾られ、カンツォーネが流れているのは日本の店と同じ。彼らが食べる「ミラノ風ドリア」や「カルボナーラ」は120円(9元 1元あたり13円換算)、「ピザ・マルガリータ」は247円(19元)と驚きの低価格。日本国内でも、店にある約70品のメニューすべて頼んでも約2万6000円である。月給1万3000円(1000元).2万6000円(2000元)の中国の若者が、同社の店でなら、月1~2回、あこがれの西洋料理を食べることができる。それまでのイタリア料理、例えば同じく中国に進出しているピザハットのピザは780円(60元)はする。サイゼリヤのピザの価格は、ピザハットの3分の1。ピザハットのピザを食べるには、所得がやや高い人でなければ食べることができない。中国に駐在する外国人がいいお得意になる。同社にも外国人は来るが、来てほしいのはやはり普通の中国人だという。

 
 上海に16店舗、広州に2店舗、北京に1店舗、台北に1店舗。香港に子会社を設立している。

 

 

「撤退の危機にあった」1年目当初価格の70%引きで勝負

 

 今は行列をなす同社だが、2003年、上海に初めて店を出した1年目は、「崖っぷちにたたされ、もう撤退しよう」と考えるほど厳しい状況だったと、(株)サイゼリヤ堀田康紀経営企画室長は語る。

 
 WTOに加盟し市場開放を始めた中国上海で、2003年、同社は、中国の若者が集まる繁華街、徐家匯(シージャーフイ)地区に1号店を出店した。ビルの1角、客席260席と日本の店に比べて約2倍の広さ。

 
 月あたりの家賃は、1等地でなくても13万円(1万元)~26万円(2万元)はする。

 
 同社の客のターゲットは普通の中国人。彼らが一体いくらでなら、あこがれの西洋料理を食べにくるのか、当初は全くわからなかった。

 
 すでに中国に出店していたピザハットのピザの20%ほど安い値段で提供したが、結局「高所得層も一般の中国人も来ない、中途半端な価格設定」であり、家賃も払えない有様だった。客は日に200人ほどしか来ない。2004年3月に出店した2号店も同様だった。やはり、西洋料理など、一般の中国人は食べないのではないかという声が社内に広がる。これは、同社の根幹問題だった。イタリア料理は世界の料理の中で、素材の味そのままで食べる、本当のおいしい料理であり、世界のどこの人々にも愛され広がる料理である。特別おいしい料理は毎日食べられない。味つけをしない、素材の味で食べる料理は、毎日食べられる。本当の豊かな食文化をもつのがイタリア料理なのだ、という同社設立理由を揺るがしかねなかった。店の周りで行列になっている店は、65円(5元)~90円(6元)で食べられる屋台のラーメン屋。このラーメン屋に来る人々を、同社の店にも来てもらわなくてはいけない。役員は、自分たちのやってきたことを信じ、必ず中国人にイタリア料理を気に入ってもらえるとして、当初の価格の70%引を英断する。

 
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 その日から、2店舗の前に長蛇の列が続くようになる。みるみるうちに1日2000人の中国の若者が押し寄せるようになった。同社が、客のニーズに真正面から立ち向かった結果だった。「狙った客層の求める商品の質と価格が合うと人は来る」と(株)サイゼリヤ堀田康紀経営企画室長は語る。
 

 原材料費は売上の50~60%、家賃は20%。とにかく料理は売れるが、店の採算が合わないのではないか。それは会社が知恵を出すこと。石油が上がったから、円安だからと人のせいにして、値上げして生き抜くことは難しい。客はそれほど甘くないと、同経営企画室長はいう。

 

 

目標は1000店舗 SCの空きテナントで

 

 同社はチェーンストアだから、まず店に行列が起きて、名前が売れ、50店舗、100店舗、1000店舗と出さないと意味がない。客の行列にすべてがある。

 
 今は、一体どの場所に出店するのが一番いいのか見つけている最中。まだ20店舗だと答えが出ない。最適な場所が決まり次第、年間20~30店舗だす予定。目標は1000店舗。 出店条件は、ほとんどが居抜き物件。郊外の中国ショッピングセンターのレストラン街を探している。北京オリンピックが終わり、世界同時不況の昨今、企業の倒産もぞくぞく始まっており、空テナントが出てくるので、比較的安くて好立地の場所が見つかる。

 
 食材調達は、ほとんどが中国国内。食の安全性を考え、ケンタッキーやマクドナルド等と取引のある信用ある会社から食材を取り寄せている。

 
 海外進出について、ベトナム、フィリピン、インドネシアはまだ国民一人当たりのGDPが低いので早い。タイバンコクは出店したいが、できれば100%子会社で出たいので保留状態。

 
 不景気の時こそ、飲食業ではファーストフード・低価格路線の店に客が集まる。お客は安くておいしいものを求めている。不景気の時こそ選ばれるサイゼリヤの今年の海外展開に注目が集まる。

 

(轟晃爾)

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