女性チームによる新業態「cafe&bar Cura(カフェアンドバー・キュラ)」 (2009/05/20)

東京メトロ上野駅構内の「エチカフィット」に今年2月オープンした「cafe&bar Cura(カフェアンドバー・キュラ)」が注目を集めている。同店は、㈱サッポロライオン(東京)の新業態。同社の女性社員だけで構成するチーム「リボンプロジェクトVIP」が開発した、「女性が1人でも入りやすい」ことをコンセプトにした店舗だ。
女性客の獲得は、飲食店にとって重要なポイント。今まで男性客がメーンだった店舗にとって、単純にマーケットが倍増するだけでなく、女性特有の「口コミ」効果も期待できる。定食屋の大戸屋が若い女性をターゲットにすることで成功しているのは有名な話だ。今や、女性客の獲得が飲食店の成功を左右すると言っても過言ではない。
ターゲットは20~30代のOL1人客
開店から予想以上の集客
サッポロライオンの新業態「cafe&bar Cura」のターゲットは20~30代OLの1人客。リボンプロジェクトVIPのチームリーダー小出愛子さんによれば、「女性がランチにしっかりごはんを食べられ、会社帰りに1杯お酒を飲める店」がテーマ。ランチはどんぶりをメーンに、ディナーにはビール、ワイン、カクテルなどのお酒と、ワンコイン(500円)前後のおつまみを提供する。
店舗面積は40・8坪、客席数は56席。オープン間もないため実績はまだ数値に出ていないが、目標月商900万円で、現在ほぼ想定どおりの売上を上げているという。また、集客に至っては予想以上で、回転数は約6と、飲食外食企業の平均約3・7を上回る。客単価は850円。
「こういうお店がほしい」
同店は2007年、新業態のアイデアを募集する社内選考会「業態開発グランプリ」第1回で、全68件の応募の中から最優秀賞に選ばれた企画。書類選考で12まで絞られ、役員へのプレゼンで5つに選別後、最終的には年1回の全国支配人会議で「Cura」が選ばれた。
企画を考えたリボンプロジェクトVIPは、元々①女性をターゲットにした業態開発を考える、②女性が働きやすい会社づくりを考える、③女性からみた会社・既存店舗への意見提案をする―を3本柱にした社内の女性チーム。
そうした活動の中で、「自分たちが行きたい店がないと思っていたところ、ちょうど業態開発グランプリが開かれるということで応募した」(小出さん)ものが通ったという。
「こういうお店が欲しい、という自然な思いから生まれたもので、企画として無理に考えたものではない」と語るのは同チームのメンバーでもある経営企画室の西村礼佳さん。「『女性はワイワイ皆で食べているというイメージがあるけど、実際は1人で食べたいときも多いよね』という雑談や、『なんでそういうお店がないんだろうね』という愚痴がスタートだった」という。
女性だって「お米」をしっかり食べたい
まず考えたのは基本メニューに「お米」を使うことだ。「女性が1人でご飯を食べに行こうと思うと、入りやすいお店はファストフードかカフェくらいで、パンやパスタがメーン。でも、女性だってしっかりと『お米』を食べたい」と話す西村さん。女性の社会進出が認知されて久しいが、オフィスの近くにある「お米」がメーンの飲食店といえばほとんどが男性向けで、女性が1人で入れる店は少ない。そこで、Curaのメニューはお米を豊富に使い、具材もバリエーションを考えられる「どんぶり」を主体にした。
どんぶりのワケ
この「どんぶり」というのも、女性向けのポイントになっている。お米を使うなら、ワンプレートの定食でもいいはずだ。なぜ「どんぶり」なのだろうか?
その理由は「どんぶりならスプーン1本で食べられ、左手を空けられるので、本を読んだり携帯電話を見ながら食べることができるから」だと小出さんは説明する。
「店舗を出すにあたって考えたのは、まず自分たちがお昼や帰りにお店に寄って何をするか。そうしたら、ぼうっとする、本を読む、携帯を見る、といった行動をしていることに気付いた」と語る小出さん。「こうしたことが自然にできるように、お行儀は悪いけど左手を空けられるメニューを考えた」という。
「内装」「小物」に女性ならではの気遣い
この他にも、女性ならではの気づかいは内装や店内の小物などいたるところに反映されている。
例えば、大きな荷物を持ってきたお客様にはカゴを貸し出すが、このカゴはカラフルなゴム製にした。「ゴムのカゴは伸びるので、バッグを入れるときに型崩れの心配がない。カラフルにしたのはお客様に『かわいいな』と思ってもらうため」と小出さん。
メニューブックはリングノートのようになっており、メニューの一覧のあとに白紙のメモ欄がある。西村さんによれば、これは「女性のシステム手帳のイメージ」。この欄があることで「今日の愚痴などを書いてもらえる。お客様によってはお店のメニューや内装について気付いたことを書いてくれる」という。
店内の奥の椅子は、背もたれの腰の辺に穴が開いていない。「女性のほとんどは小さなバッグを自分の背中と背もたれの間に置く。しかし飲食店の椅子には意外と背もたれに穴の開いたものが多く、気付かないうちに荷物が落ちていることがある」と西村さん。穴のない椅子にすることで荷物を置きやすくした。
このように、言われなければ気付かないような、女性にとって快適な細かい工夫が多くある。
「最初から気にはしないところでも、使ってみて変なところで気にならないように心掛けている。気付かないところで居心地がいいのがポイント」と小出さんは説明する。
トイレは男女で離れた場所に
トイレも男女それぞれで離れた場所にある。個室が別々というのはよくあるが、場所が全く違うというのはなかなかないという。「離れた場所にあることで、並んでいるときに男女が顔を合わせることや、隣の物音に気を遣うことがなくなる」と西村さんは話す。
喫煙スペースにも工夫がある。喫煙スペースはガラスの壁で仕切り、完全分煙になっているが、「シックな作りのカウンターにした」と西村さん。喫煙室というと最近は追いやられた場所というイメージがあるが、男性の喫煙率低下に反し、一時期若い女性の喫煙率が上がったのを踏まえて「格好良いと思える場所にした」という。
外から客席が見える
「オープンカフェ」のような開放的な店舗
また、女性が1人でも入りやすい店舗にするために、内装以上に重要なのが外観だと小出さんは話す。
「自分が1人で入ってもいいのかどうかを決める際には、まず店舗の中にどんなお客様がいるかを見る。中に自分と同じような女性の1人客がいれば入りやすい」
そのため、地下鉄の駅構内でありながら「オープンカフェ」のような開放的な店舗にした。外から客席が見え、どんな人が入っているのかが一目で分かるのがポイントだ。それでいて、天井が低くなっており、店の奥は落ち着いた空間になっている。
出店場所を東京メトロ駅内の、いわゆる「エキナカ」にしたのもターゲットとなる20代~30代OLが1人で入りやすいことを見込んでのもの。店舗側から「エキナカ」やビジネスオフィスのビルなどOLが仕事帰りに1人で寄りやすい場所に話を積極的に提案し、最終的に新オープンとなった上野の「エチカフィット」に決まったという。
課題をクリアしながら、得られたノウハウを既存店に生かす
「実際に女性スタッフが携わること」
2月20日オープンから約3カ月経ったが、Curaの来店客のうち女性客は9割を超え、想定したとおり1人客をメーンに獲得している。
特に回転率の高さは想定以上。「女性だから長居をするという予想もあったが、1人客メーンなのでそれほど滞在時間は長くない」と西村さん。
ただ、ランチはそれでいいものの、夜でも滞在時間が短いのは予想外だという。「夜のアルコール比率が意外に少なく、夜でもご飯とお茶という組み合わせが多い。そのため客単価が低くなってしまった」と説明する。
こうした課題をクリアし、Curaの姉妹店を出していくことと、Curaで得たノウハウを既存店の女性客獲得に繋げていくことが次の目標だ。特に、既存店へのノウハウは現時点で十分集まっている。
これについて、「女性客を獲得しようという店舗は多いが、ほとんどは男性が『女性が喜びそう』と考えたもの」と小出さんは語る。
「女性が見れば、内装や店の小物など、『女性の手が入っているか入っていないか』は一目で分かる。本当に女性客を獲得するなら、紙の上で考えたことではなく、実際に女性スタッフが携わることが重要だ」と指摘する。
また「例えばCuraの場合、男性が女性を連れてくるお店ではなく、女性が男性を連れてくるお店を目指している。男性が主体の既存の考え方とは違う視点が必要だ」という。
(酒井真一)
(続きは紙面)
