外食アワード2010受賞者インタビュー・サイゼリヤ 正垣泰彦会長 (2011/04/05)

――飲食店を始めたのは、大学時代からとお聞きしていますが。
正垣会長 東京理科大在学当時から、渋谷にある渋谷食堂という定食屋でアルバイトをしていました。毎日が楽しくて、飲食店の魅力を感じていました。だから大学生でありながら起業してしまった。
――イタリア料理との出会いはなんでしょう。
正垣 2年後に店が全焼してしまい、飲食店を止めようと思いました。そのとき母が「自分が選んだ道だから何があっても止めてはいけないよ」と必死になってとめてくれたんです。
今思えば、今日サイゼリヤがあるのは母のおかげです。それを機にいろいろな料理を調べて、毎日食べても飽きず体にいい料理、たどり着いたのがイタリア料理だったのです。
――当時は高い西洋料理を低価格で提供するのは大変だったのはありませんか。
正垣 創業当時から、「お客さんのために、正しく、仲良く」が当社の経営理念です。人間はおいしいものを食べている時が一番幸せになる。それも大勢の方においしい料理を低価格で提供しなければ意味がありません。だから、創業当時から値段を高くしようと思ったことは一度もありません。中国に進出したきっかけも貧しい人に、安くイタリア料理を食べてもらいたかったからです。
――低価格メニューを品質を落とさず提供し続けることは並大抵のことではなかったのではないですか。
正垣 創業当時、来店するお客さんがなかったので、料理の質を落とさず価格を下げる実験を試みました。3割、5割下げ、7割まで下げたところで連日行列になったのです。その価格で運営するためには、さらに効率化に取り組むとともに、最低でも国内1000店舗のチェーン展開を目標に掲げました。
――コストを下げるために実行したことは。
正垣 一般的に食材を調達するためには、商社やメーカー、問屋などが入っています。それを全て直営でやればコストは下がります。当社では、野菜は自社農場で種から育てています。また、食肉は日本と四季が逆のオーストラリアにカミサリー(食品加工工場)を作って1年中安定供給しています。これらの原料、生産、物流、販売を全て自社で行う「バーティカルマーチャンダイジング」がほかのチェーンストアと大きく違う点です。
――流通においてもコスト改善をしているとお聞きしています。
正垣 2006年、物流事業者やパートナー企業の協力の下、物流改革プロジェクトを立ち上げ、100を超える改善テーマに取り組みました。具体的には中間拠点を設け積載率の向上や効率化、配送ルート、配送時間の変更によるルート削減などで、いままでに約6億円以上のコストダウンが図られています。
――調理や接客において、ITを活用されていると。
正垣 IE(インダストリアル・エンジニアリング)に基づいて、数値化による合理化を進めているところです。実験店では、調理や接客の作業全てを撮影し、200以上の動作を分解して無駄を発見し、改善しているんです。
――人材育成の面からも独自なシステムを取り入れているとお聞きします。
正垣 外食産業の欠点は、まず「仕事がきつい、つらい、安い」という労働集約型産業ゆえの欠陥だと感じていました。だからこそ、まず従業員を定着させること、そのためには給料が良くて、労働環境がいいことが前提条件です。当社は人材育成のため「作業・教育・評価・報酬」の四位一体のシステムを実践しています。おかげさまで当社の離職率は極めて低くそれは自慢しています。
――年々、店舗も増えて国内、海外含めもうすぐ1000店舗になりますが。
正垣 毎年、新規採用は150~200人です。当社は現場主義なので、まず店に配属し10年間じっくりとオペレーションを習得してもらいます。調理、ホール、調達、総務と全て覚えたものが店長になる。そこでどんどん改善提案を出してもらう。そして本部に行き、政策起案や長期計画を立案し会社の中枢になっていくというシステムです。IT系や生産管理技術の専門職はスカウトしますが、それ以外は社員を競争させ技術力を高めていきます。外食産業は特に無駄を省き、生産性を上げることが重要です。
――外食産業の現状と今後をどう思われますか。
正垣 システムや接客で、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなど外資系ファーストフードに学ぶべき点がまだまだ多くあります。その意味からも、日本の外食産業界は技術水準を高め全体の底上げが必要です。また、公の企業として社会貢献の認識がまだ低いと感じられます。個人資産を貯め込み、法人資産を増やさないことも疑問を覚えています。
――最後に将来の夢をお聞かせください。
正垣 今、当社に来店いただくお客様は年間1億3000万人を数えます。やっと日本の人口を超えたばかりです。最終的には世界人口に匹敵する60億人余が訪れていただくことが夢です。
(荒井秀典)
正垣泰彦氏(しょうがき・やすひこ)
1946年兵庫県生まれ。1967年東京理科大学在学中に、洋食レストラン「サイゼリヤ」、を創業。1998年ジャスダック上場、2000年東証1部上場。2009年代表取締役会長に就任、現在に至る。2010年8月期で売上高994億円、店舗数888店(国内842店、海外46店)、従業員は正社員1783人、準社員6738人。
* 1 バーティカルマーチャンダイジング
直訳すると「製造直販」。最適な素材を最適な品質にするため、素材の開発から集荷、加工、店舗調理、商品提供まで自社で一貫して行うこと。新鮮な野菜は自社農場で種、苗から育て、食肉は日本に4工場、オーストラリアに1工場、カミサリーをつくり安定供給する。さらに、イタリア料理に欠かせない最高級の生ハム「プロシュート」やワイン、オリーブオイルはイタリアの産地・メーカーと連携し自社の直輸入しリーズナブルな価格で提供している。昨年、サイゼリヤ全店で消費されたワインは250万本を超えている。
